Thomas & Friends' Railway Series

チマチマと執筆しているアイリッシュ海に浮かぶ島に住む有名な機関車達のお話

第1話 A Coupling / 脆い連結器

ゴードンはノース・ウェスタン鉄道の機関車だ。
彼は昔からナップフォードからヴィカーズタウンまで急行を牽いて走っている。
彼はそれを誇りに思っていてそんな特別なことは自分にしか出来ないと思っていた。
しかし、彼が修理に入っている時には他の機関車が牽いているし、最近は彼よりも早い機関車がどんどんと現れ彼の自慢も廃れ気味となった。

ある日、ゴードンはいつものようにナップフォードから急行を牽いて行こうとした。
乗客が客車に乗り込むのを待っていると近くから話し声が聞こえた。
パーシーとスタフォードが操車場で休憩しながら話をしていたのだ。
「ねぇスタフォード、君はこの島で一番速い機関車は誰だと思う?」
「そりゃぁ、ゴードンさ。彼はいつも急行を牽いているし…。」
「でも急行はヘンリーやジェームスやくまだって牽くさ。それに今となっちゃゴードンだってのろまだよ、ケイトリンやコナーはスペンサーよりも速いし、ピップとエマはこの鉄道のディーゼル機関車の中で一番速いって言ってるんだから」
「しかも本土にはシティー・オブ・トルーローやフライング・スコッツマンみたいに有名で速い機関車だっているみたいだしね!」
パーシーが言うとチャーリーも付け足した。
ピッピー!
彼らが笑い合っていたちょうどその時、車掌が笛を吹いたため、ゴードンは走り始めた。だが、彼は不機嫌そうに走っている。
車輪はガタガタと乱暴に揺れ、ピストンもいつも以上に早く回る。
「落ち着けゴードン、そんなに慌てて走ったら客車まで揺れてお客がカンカンになるぞ。」
機関助手が慌てて蒸気バルブを調整したが無駄だった。
「こんなに暴れるのは久しぶりだな!」
だが、今のゴードンには聞こえない。彼は自分が遅いということに腹を立てていたのだ。
「フン!確かに俺は昔と比べたら遅くなってはいるさ、だけどな…この島で一番なのに変わりはないんだ!よ〜し、明日皆に思い知らせてやる!」
だが、後にこれが大変な事故になるとはゴードンは思いもしなかった…。

翌日、ゴードンはイライラとしながらチャーリーに当たる。
「早くしろ!急行は待ってられないんだから!」
でもチャーリーは新しいジョークを考えるのに夢中でゴードンの話は耳に入っていない。
しかも悪いことに、彼は後ろの車掌車の連結が古くて脆いことに気づいていなかったのだ!
転轍手もまだ新米で、ちゃんと確認をしないまま連結した。

やがて、乗客が乗り込みゴードンは走り出した。
「さぁ〜遅れちゃいけない。急げや急げ、急げや急げ!」
「「待てって、そんなに慌てるなよ〜!」」
後ろから客車達がガタガタと文句を言いながら付いて来る。

やがてゴードンの丘にさしかかった。普段ならウェルズワース駅に止まって後押しの機関車を待つのだが、今日は客車が6両であることもあってそのまま突き進む。
「早く早く!もっと早く走らないか!」
ゴードンは客車達を急かしながら丘を駆け上がっていく。

ところが、後ろの車掌車は連結がギシギシと言い始めて不安になってきた。
「おいゴードン止まってくれ!連結が悲鳴をあげてるよ!」
でもゴードンにはその声が聞こえない。
やがて列車は丘の中腹に差し掛かった。
貨物列車は一度ここで止まり、ブレーキをかけながら慎重に丘を下る。
旅客列車は止まらずにそのまま疾走するのだが、前方に列車がいる場合は一度止まってから丘を下るのだ。
ゴードンも前方に貨物列車がカーブを曲がるのが見えたため一度列車の速度を落とし始めた。
しかしこれが大きな間違いだった。
この衝撃で客車同士がガチャガチャと音を立ててぶつかり合った。
そして遂に…
バキッ!
連結が外れて後ろの車掌車だけが丘の中腹に残された。段々とスピードが上がりそして、ウェルズワース方面へと下っていく。

一方丘の麓ではヘンリーが貨物列車を牽いて信号待ちをしていた。
「あーあ、信号が赤じゃなかったら丘を楽に超えられたのに…。」
「前方にゴードンが急行を牽いて走っているからな。丘を下るまで待たないと」
と、その時丘の方からガタガタと音が聞こえていた。
「何だろう、客車か貨車の音だな?」
「わぁ、大変だ!こっちに客車が向かってくる!」
ヘンリーの機関士が慌てて後退させようとしたがもう遅かった!
ガッシャーン!
客車とヘンリーは正面衝突してしまったのだ。幸い、乗客やヘンリーの機関士達に怪我は無かったがヘンリーと客車のバッファーはボロボロになってしまった。

すぐにエドワードがクレーン車を牽いてやって来た。貨物列車はジェームスが牽いて行き、乗客はバスに乗って目的地まで向かい、作業員達が脱線した客車を線路に戻している。
客車が平らな貨車に載せられると、今度はエドワードが壊れた客車を修理工場まで牽いて行き、ヘンリーも後ろ向きで機関庫へと戻っていった。

トップハム・ハット卿はこのことに関して酷くおかんむりで、翌日新入りの転轍手に気をつけるよう注意した。そして、ゴードンにも厳しく注意し、当分はエミリーと交代して各駅の旅客列車を牽くように言い渡した。
ほとぼりが冷めるまでの間、ゴードンはノロノロと走ることになりそうだった…。