Thomas & Friends' Railway Series

チマチマと執筆しているアイリッシュ海に浮かぶ島に住む有名な機関車達のお話

第2話 The Back Engine / 後押し機関車のジェームス

ジェームスは赤色のボディが自慢でいつも旅客列車の仕事をしたいと思いながら働いている。
また、彼は本線で客車や貨車を牽いて走っているが、時々トーマスの支線やエドワードの支線、その他の支線で働く事もある。しかしその度にジェームスは自分で入れ替えをしなければならなくていつも文句ばかりだ。
ある日の夕方、ジェームスはナップフォード駅でぶつぶつ文句を言っていた。
「まったく!僕みたいな赤い立派な機関車は客車を牽くべきなのに!トップハム・ハット卿は貨車を牽かせたり待避線で入れ替えをさせる!こんなの…こんなの…はしたない!」
トーマスとパーシーはカンカンだ。
「入れ替えがはしたない⁈どういうことさ!」
エドワードは入れ替えを全く嫌だとも言わないでやってるのに!」
「フン!エドワードは僕を子供の暴走から救ったとしても年寄りの役立たずさ!」
彼はプンプン怒りながら機関庫に戻っていった。

翌日、昨日の不機嫌はどこやらジェームスは嬉しそうにナップフォード駅へと来た。
今日の彼はトーマスの支線を手伝いに行ったエミリーの代わりに急行を牽くことになったからだ。
「よーし、久しぶりの急行だ!僕が時間通りに走ればトップハム・ハット卿は僕に貨車を牽かせることはもうないだろうな!」
しかし、転轍手が連結しようとした時駅長が彼を止めた。
「あぁ、ちょっと待ってくれ!ジェームスにはこれからウェルズワースに行ってもらうんだ。」
話を聞いてジェームスはびっくりだ。
「えぇっ⁈そ、そんな!どうしてウェルズワースに行くんですか!確かにあの駅は急行が止まりますけど…。」
「トップハム・ハット卿からの伝言さ。デリックが故障して操車場の仕事が手付かずなんだ。ダックやドナルドとダグラスは支線の仕事で忙しいし、ビルとベンも手が離せないみたいでね、戻るまでの間君が代わってくれとのことだ。」
ジェームスはだんだんと不機嫌になって来た。
「それじゃあ、僕の急行は誰が牽くんですか?エミリーもいないのに。」
「あぁ、それならくまが引き受けるよ。君は心配せずに仕事に行ってくれ。」
駅長はそういうとハット卿に報告するためにオフィスへと戻っていった。
ジェームスは不機嫌そうに客車から離れ、操車場でブレーキ車を連結するとウェルズワースへと向かった。

ウェルズワースに着くと、デリックが黒い煙を出しながら待避線にいた。
顔は青白く、気分が悪そうなのが読み取れる。
「ゲホッゲホッ!や、やぁジェームス…。」
ジェームスはデリックを見ると不機嫌そうに蒸気を吹いて言った。
「ふん、その汚い煙を僕の綺麗なボディにかけないでくれよ?そんなことされたらお客さんに申し訳ないよ!」
「えぇっ、君は客車を牽くつもりでいたのかい?僕の仕事は貨車を牽いたり操車場で入れ替えることなのに…ゲホッ。」
「そ、そりゃ…」
ジェームスが言い返そうとした時、駅長が操車場長と共にやってきた。
「デリック、もうじきデンが迎えに来る。それからジェームス、君は彼の仕事を代わってくれ。まずここの貨車や客車を入れ替えて、それが終わったら港まで空の貨車を届けてくれ。頼んだぞ。」
ジェームスはまた不機嫌になった。嫌いなディーゼル機関車の代わりに仕事、しかも入れ替えと貨車を牽く。これ以上ひどい仕事はないと思っていた。
しかし、ゴードンのようにストライキをしては元も子もない。渋々ながら彼は仕事を始めた。
まずは操車場の客車や貨車を入れ替える。
急行用の客車はボコが急行を牽くために、空の家畜貨車はエドワードが市場に牽くために、陶土の貨車は後でブレンダムの港まで牽いていくために、と客車をちゃんとした位置に揃え、貨車を種類ごとに分けて揃えさせる。
操車場を行ったり来たり、転車台で向きを変えたり、ポイントで進路を変えたりと半日忙しく働いた。

やがて陽が真ん中に昇り、機関士と機関助手は紅茶とサンドイッチでお昼を食べていた。
ジェームスもやっと休憩できてほっとしていた。

お昼休みが終わるとジェームスは空の貨車を連結して港へと向かった。
行く途中、貨車がいたずらを仕掛けるかと内心、心配していたジェームスだったが陶土の貨車は意外にも大人しくついてきた。

港で貨車を切り離し、再びウェルズワースへ戻ろうとしていると港の監督がやって来た。
「やぁ助かったよ。これでビルとベンに陶土を取りに戻らせることができるよ。」
監督に言われ、ジェームスは少し気分が良くなった。

操車場にもどってもまだ有頂天になっていたところへ高い汽笛の音が聞こえた。
ポッポー!
ダグラスだ。後ろには貨物列車を牽いている。
「あぁ、ジェームス。ここでの仕事はいかがですかな?」
「まぁまぁさ。嫌な貨車達がすんなり言うことを聞いてついてくる以外は最悪だけどね。」
「ハッハッハ!あなたらしい答えですね!それはそうと丘を登る手伝いをして下さらないでしょうか?私の貨車はともかく新しいブレーキ車が言うことを聞かなくて…。」
「ふん!それこそ君らしくないや!貨車の扱いがエドワードに次いで上手なのに。」
だが、ジェームスが後ろに回るとその答えがすぐに分かった。
「あぁ、復帰したと思ったら懐かしいやつらに会うな。最初は俺を壊したやつに次は赤いうぬぼれやのジェームス。」
それは意地悪なブレーキ車だった。
以前、彼はジェームスの列車に付いて丘を登ろうとした時にバラバラにされたのだが、どういう訳だかスクラップにされずに修理工場で修復され、また働くようになった。

「へっ、相変わらず目がくらくらするくらいの赤いボディでいるのか。錆びても大差ないけどな!」
ブレーキ車が言うと他の貨車達がゲラゲラと笑った。
ジェームスは無視して乱暴にぶつけた。
「いてててて!いくらリストアされたとは言えども俺だって古い身なんだ、丁重に扱えよな!」
「フン、生意気言うのに丁重に扱うなんてごめんだね!」
ピーッ!ピッピー!
ポーッ!ポッポー!
二台の機関車は蒸気を吹き上げて貨車を丘の上まで牽いたり押したりした。

だが、丘の頂上まであと少しの所でジェームスの蒸気が無くなってきた。
更に悪いことに意地悪なブレーキ車が貨車にヒソヒソと囁いた。
彼は貨車達に後ろに下がるように命じていた。
ダグラスをバカにするよりジェームスにいたずらする方がよっぽど楽しいと考えたのだ。
「後ろに引っ張れ!後ろに引っ張れ!」
息がゼェゼェとなり、車輪が空回りし始める。
煙突からは火花が出ていて、顔はボディのように真っ赤だった。
「ほぉら、どうしたんですかー!もう少しで頂上ですぞー!」
先頭からダグラスが叫ぶが、ジェームスの耳には入らない。
そしてとうとう蒸気が切れ列車がウェルズワース方面へと下り始めた。
ジェームスの機関士もダグラスの機関士も車掌も異常に気づき、すぐさまブレーキをかけたおかげで列車は無事にホームへと滑り込んだ。

ジェームスは待避線に移され、すぐさま機関士達が話し合い始めた。
「ジェームスの蒸気が切れたみたいですね…水を補給さえすればまた登ることは出来るんですが。」
「うーん…だがもうダグラスの列車は既に遅れているからなぁ。待つわけには…。」
ピッピーー!
そこへエドワードがブレンダムからの旅客列車を牽いて戻ってきた。
「あれ、どうしたんですか?」
ジェームスの機関士が事情を説明すると彼は機関士に話した。
「僕の旅客列車はまだ時間があるからジェームスの代わりに後押しすることが出来るよ。」
「なるほどな、駅長と操車場長に話してみるよ。」
彼は操車場長と共にすぐに戻ってきた。
「いい考えだエドワード。すぐにダグラスと貨物列車を丘の反対側まで押してくれ。ジェームスには君の旅客列車を牽かせるから。」
操車場長も同意し、すぐにエドワードはダグラスと貨物列車を押し始めた。
ピーッ!ピッピー!
ポーッ!ポッポー!
ジェームスはただそれを眺めているより他なかった。
その後、ジェームスはエドワードの代わりに旅客列車を牽いて支線を一日中走り回っていた。
せっかくやりたかった旅客列車の仕事だが、今の彼にはちっとも嬉しくない。
ちゃんと仕事するはずが途中でエドワードに変わってしまった。ハット卿はきっとこのまま操車場でのいれかえをさせるつもりだ。
彼はそう考えていたのだ。

やがて夜になり、ジェームスはウェルズワース操車場の機関庫で休んでいた。
ボコとエドワードも戻ってきて、彼を元気付けていたがジェームスは相変わらずだった。
そこへトップハム・ハット卿が車に乗ってやって来た。
(まずいなぁ、ハット卿だ…。)
しかし彼はニコニコ笑っていた。
「ジェームス、今日はよく頑張ったな。デリックの分までしっかりと働いてくれた。…ダグラスの列車をちゃんと後押しできなかったのは仕方がない。でも君は今日、役に立つ機関車としてよく働いたことに代わりはない。」
ジェームスはさっきの気分はどこやらすっかり有頂天になっていた。
「明日はエミリーもトーマスの支線の仕事もあるし他の機関車も忙しい。 そこで…君に急行を任せることにするよ。これからもその調子で赤いボディに恥じぬよう、頑張ってくれたまえ。」

このお話の出演はトーマス、パーシー、デリック、ダグラス、エドワード、そしてジェームスでした。